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僕のとても身近な人が苦しんでいる。
その苦しみは本人自らの選択によってもたらされている。
彼と知り会ったのは最近のことではないが、
身近な存在になったのはつい最近のことである。
彼は僕より年下で、歳の割にはしっかりしてて、
真面目で、がんばりやで、照れ屋で、おデブで、
そしてかわいいヤツ。
彼は太陽、僕は月。
僕は彼に照らされる。
その太陽であるはずの彼が、
このところ黒点増殖によって覆われてしまうかのように
翳りつつある。
放たれる光は徐々に徐々に失われ、
それでもその太陽は僅かに開いた空隙から
光を外に放とうとしている。
健気。
そんな時ぐらい別に大人しくしていてもいいんだよ。
そんな時ぐらい月を照らさなくてもいいんだよ。
それでも太陽は照らそうとする。
苦しみは本人自らの選択によるものだと冒頭で書いた。
そう、別な選択肢を選ぶこともできた。
その別な道とは言うなれば多少の労は要するが比較的温く平穏な、
しかし流される道。
もうひとつの道、彼の選んだ道は茨の道。
彼がその選択肢を選んだことによって、
例えば充実した日々が送れるという保証はない。
例えば幸せな日々がくるという保証もない。
例えば安らかに眠れる戸張が降りてくるという保証もない。
返って後悔すらする日が待っているのかもしれない。
茨の先には何があるのかまったく分からないのだ。
それでも彼はその道を選んだ、彼なりの信念に基いて。
今頃彼はどうしているだろう・・・。
あの日あの場所で「ホントに僕でいいの？」と彼は言った。
それは本当は僕が彼に用意していた言葉だった。
僕が恐る恐る言おうとして、でも言えなかった言葉。
・・・真っ向。気がつけば彼は直球しか投げていなかった。
そこが太陽たる所以なのだが、
だからその直球は差し当たり直射日光というところか。
（冗談を言っている場合ではない。）
ともあれ僕の卑怯な八方美人的なソフトライトとは違うのだ。
これは生半可な恋ではないのだ。
寂しさを紛らわすその場凌ぎの恋愛ごっこではないのだ。
以前の僕だったらこの類のものは避けていた。
恋とか愛とか、そういうものを避けていた。
なぜなら僕にとって上手くいってはならないものが
恋とか愛というものだったから・・・。
呆れるほど臆病で卑怯でネガティブ思考の月は
その太陽によって徐々に変わりつつあった、
今でこそ崩れそうな太陽に拠って。
今まで何度も何度も同じことを言わせた。
今まで何度も何度も同じ光を感じさせてくれた。
上手くいってはならないものが上手くいったとき
果たして僕はどうなるだろう・・・。
何かが変わろうとしている。
少なくとも今言えることは僕は逃げることをやめようと思っている。
・・・こうしてる間にも彼は戦っているだろう。
でもまだ僕の出番ではない。
今はまだ照らされようと思っている。
空隙の間から僅かに絞り出される光を
目一杯に受け入れ照らされていようと思っている。
それが月としての役割・・・。
僕は逃げるのをやめようと書いた。
それは以前の僕には考えられないことだった。
僕は決して心を奪われることなどないと思っていた。
奪われまいとも思っていた。
「あなたが必要なんです・・・」
やられた。完全にやられた・・・。
僕はまんまと彼の照準にロックオンされて、
コロナ火炎砲に命中して丸焦げになってしまっているのだ。
ふふふ・・・、なんともチープな表現だな。
僕らしい。まあいい。
要は僕は恋をしてしまったのだ（笑）。
彼のその選択は僕のためなのか？
それは分からない。
しかし、それは僕にとってどうでもいいことだ。
僕のことを必要としてくれるならば、
僕は喜んで無償の愛を捧げよう。
例え勘違いの代物だったとしても、それでもいいのだ。
彼のために生きる、そう思えるならば。
生きる意味をまたひとつ見つけた。
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