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忌まわのきわに幸せだったと思えたならば
その人生は総じて幸せだったと言えるのだろうか。
それまでにどれだけを欲し、どれだけを満たしたか、
それがある種の指標だろう。
心という名の器に満たされた酒の量、割合。
米の種類も重要だが、精米歩合も重量だろう。
お猪口の中は時に地位だったり、名誉だったり、
あるいは金だったり、物だったり・・・が混在する。
しかし「第一に挙げるもの」とした場合、
多くの人々は上記のようなものを挙げない。
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ある人は言う、
人生は自分で切り開ていくものだ、と。
別のある人は言う、
人生は運命によって決めらている、と。
僕はどちらも尤もだと思うし、
どちらも同じ意味だと思う。
自分で切り開かない人生ほどつまらないものはないし、
また自分で人生を切り開く努力をした人には、
何らかの形で報われた結果を得るだろうと思う。
そしてその行動に拠ってもたらされた結果は、
それが即ち運命である。つまり見方次第という意。
現在から未来を見るか、未来から現在を見るかの違い。
人生を一生懸命切り開いているかと自分に問うてみると、
残念ながらそうでもない。
流されている部分が多分にある。
自らの煩悩を断ち切ることができずに流される。
なので行動からもたらされる結果もそれなりだろう。
・・・ただ運命は大きく変わろうとしていた。
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今から２年前に、それは始まった。
彼は太陽で、僕は月・・・当時、彼は苦しんでいた。
太陽であるはずの彼から、放つ光は徐々に徐々に失われ、
しかしそれでもその太陽は僅かに開いた空隙から光を外に
放とうとしていた。健気。
苦しみは太陽本人、自らの選択によるものだった。
別な選択肢を選ぶこともできた。
別な道とは多少の苦労・心労は要するが比較的温く平穏な、
しかし流される道。
もうひとつの道、彼の選んだ道は茨の道。
彼がその選択肢を選んだことによって、
例えば充実した日々が送れるという保証はない。
例えば幸せな日々がくるという保証もない。
例えば安らかに眠れる戸張が降りてくるという保証もない。
返って後悔すらする日が待っているかもしれない。
茨の先には何があるのかまったく分からない状態で、
彼はその道を選んだ、彼なりの信念に基いて。
あの日あの場所で「ホントに僕でいいの？」と彼は言った。
それは本当は僕が彼に用意していた言葉だった。
僕が恐る恐る言おうとして、でも言えなかった言葉。
以前の僕だったらこの類のものは避けていた。
恋とか愛とか、そういうものを避けていた。
なぜなら僕にとって上手くいってはならないものが
恋とか愛というものだったから・・・。
呆れるほど臆病で卑怯でネガティブ思考の月は
その太陽によって徐々に変わりつつあった、
今でこそ崩れそうな太陽に拠って。
今まで何度も何度も同じことを言わせた。
今まで何度も何度も同じ光を感じさせてくれた。
上手くいってはならないものが上手くいったとき、
果たして僕はどうなるだろう・・・。
僕は決して心を奪われることなどないと思っていた。
奪われまいとも思っていた。やられた。完全にやられた。
僕はその時、逃げることをやめようと思った。
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例えば３ヵ月後、
お互いの嫌な部分が見え、
それが耐えられなくなり別れるかもしれない。
例えば半年後、
浮気がばれ、それが許せず別れるかもしれない。
例えば１年後、
浮気が本気になり、別れるかもしれない。
例えば３年後、
転勤等で距離が離れ、
遠距離が耐えられず別れるかもしれない。
例えば５年後、
実家の事情で里に帰らなくてはならず、
別れを余儀なくされるかもしれない。
例えば１０年後、
重い病気にかかり死別するかもしれない。
例えば２０年後、
１００万回の嘘はどうにか許せても、
１００万１回目の嘘は許せずに別れるかもしれない。
例えば３０年後、
増水した川にどこかの子供がおぼれているのを見つけ、
それを助け、身代わりになって死に別れるかもしれない。
例えば５０年後、
天寿を全うし大往生して別れるのかもしれない・・・。
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・・・いずれ来るであろう別れを今から憂いてる。
僕ってバカだよね。心底惚れてるんだろうね。
飽きっぽく、面倒くさがりな僕は、いつもだったら
人に対しても飽きやすく、いずれ意思疎通も億劫になる。
こんな性格なのに、彼と出会って２年以上経って、
彼のことがますますかわいく見え、そして愛しい。
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