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君よ もしこれを見たら便りをくれないか
君に会って謝りたいことがあるんだ・・・
小学校4年の時 君はどこからか転校してきたね
とりわけでっかいヤツだったね
転校してきたばかりの日にいきなりジャイと喧嘩したね
そしてジャイを泣かせたよね
ジャイは僕の友達の中でも体も大きくクラスの中で一番強かった
そいつを泣かしたんだから凄いヤツが転校してきたと思ったよ
数日後の体育の時間 準備運動をしていた時に
君は僕にちょっかいを出してきたね
屈伸運動で横に広げた手を僕のアゴに当ててきたね
僕の歯はそれでグラグラしたんだよ
だけど僕は背も小さくとても君にはかなわない
何しろジャイを泣かせた奴なんだからね君は
だからあそこは逃げるしかなかったよ
体育の時間が終わって僕は一目散に教室に戻り
誰もいない教室で君の机から図工の教科書を取り
自分のランドセルに隠したのさ
（ざまあみやがれ）
学校が終わって僕は一人で帰り
途中回り道をしてある川に君の図工の教科書を捨てたんだ
（まいったか）
家に帰るといつものように母親が僕を迎えたさ
僕はすぐにその一部始終を母親に話したんだ
川に君の教科書を捨てたことも
何ですぐ話しちゃったのかな
罪悪感でも感じてたのかな
すると母親が
「バカな子だね 抜けそうな歯だったんだよ」
そして教科書を捨てた川に母親を連れて行ったんだ
教科書は川の土手のところに落ちていてすぐに見つかったよ
それを家に持って帰り母親に雑巾できれいに拭いてもらって
「明日渡しなさい」
と言われたよ
次の日の朝学校に着くともう君は来ていて
僕は君のところへいき
「これ君のだろう」
と図工の教科書を渡したよね
流石にこのときは自分の調子良さに感心したよ
君は
「ああ探してたんだよ」
感謝してたね
それ以来君と僕は友達になったね
僕はそれでクラスで一番強いヤツと友達になったんだよね
学校の帰りはいつも一緒だったね
僕は無口でおとなしくて勉強も体育もあまりできない
君はデカくて活発でたぶん勉強もできたよね
今振り返ると小学生時代はジャイや君のように
デカくて勉強も体育もできる奴が友達だったよ
いつも君の家によって少し遊んでから自分の家に帰ったね
確か君の家は牛乳屋さんだったよね
そんなある日君の妹が家の前でトラックに轢かれて亡くなったね
たぶん幼稚園児だったと思うけど 僕は一度も会っことなかったね
夕刊に出ていたような記憶もあるよ
その後も君と僕は学校が終わると一緒に下校し君の家に寄ったよね
君の家に仏壇があったけど妹の写真はなかったね
父親には何度か会ったけど母親を見たことがなかったね
そして数週間後いつものように一緒に帰ったとき
途中まで行った所で左に曲がると君の家で
まっすぐ行くと僕の家だけど
いつもは左に曲がって君の家に寄るんだけど
この日はなぜか僕はまっすぐ歩いてしまったんだよね
君が
「おおーい こっちだよ」
僕はちょっと振り返り だけどまっすぐ歩いてしまったんだよね
その数日後君はどこかへ転校してしまったね
君が僕の小学校にいた期間はたぶん2・3ヶ月だったろう
その数ヶ月の間に君は妹をなくし唯一の友達である僕に裏切られた
何故僕は君を裏切ったのかよく覚えていない
良い風には『別れがつらかった』とも考えられるが
おそらく単なる『気まぐれ』だろう
あれから25年以上経ったけど君は何をしてる？
どこにいる？ 知りたい
君に会って謝りたいんだ
サヨナラも言わなかったからね
君よ もしこれを見たら便りをくれないか
君に会ってホント謝りたかったんだよ・・・
・・・でも僕のこの思いは叶わなそうだね
君に会えてホント良かったよ
ありがとう・・・
少しでも僕の友達でいてくれてありがとう・・・
By H.
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